植物や微生物等の関連リソースやゲノム情報等の基盤整備、メタボローム解析手法などに関わる研究開発が目的です。セルロースバイオマス増産研究のモデル植物として期待される「ブラキポディウム」におけるセルロース生産向上、生長や環境耐性の向上等に関わる遺伝子探索を実施するとともに、シロアリ共生微生物群などを対象に、メタゲノム解析及びシングルセルでのゲノム解析を行います。
チームリーダー:篠崎 一雄
バイオマス研究基盤チームでは、バイオマスモデル植物およびバイオマス微生物に関する基盤研究を総合的に推進します。バイオマスモデル植物研究では、モデル草本植物ブラキポディウム(Brachypodium)を扱い、バイオリソース(重イオンビーム変異体、完全長cDNAクローン、エコタイプ)と先端オミックス基盤(トランスクリプトーム、メタボローム)、遺伝子機能解析のための表現型解析基盤、データベース基盤など、草本バイオマス研究のモデル植物として必要な基盤の開発を進めます。バイオマス微生物研究では、シロアリ共生微生物などから重要遺伝子の探索を行うとともにバイオマス利活用に重要な微生物リソースの高度な整備をセルラーゼ探索・設計チーム、酵素研究チーム等との連携研究により進めます。
ブラキポディウム(Brachypodium distachyon, ミナトカモジグサ) は、温帯起源のイネ科一年生草本植物です。イネ科の中で小麦や大麦などと同じイチゴツナギ亜科に分類される植物です。2010年にイチゴツナギ亜科の植物としては初めて全ゲノム塩基配列が解読されました。ブラキポディウムは、ゲノムサイズか小さく、植物体の大きさが比較的小型で、実験室内での栽培に適しており、また、形質転換が可能であり、モデル植物研究に適していると考えられます。イネ科植物など草本系バイオマスは.「ソフトバイオマス」ともいわれ、木化の程度が低く加工適性の高い原料と考えられています。私たちは、ブラキポディウムを利用して、イネ科草本植物のバイオマス生産性の向上等に関わる有用遺伝子の探索を進めます。
ブラキポディウムの全ゲノム塩基配列が解読されました。今後、ブラキポディウムがエネルギー作物や食料作物開発研究のためのモデル植物の1つとして、有用遺伝子探索などを加速するために必要な研究基盤の早期の充実が期待されています。私たちは、理研の先端技術を活かして、完全長cDNAクローンリソースの整備や重イオンビーム変異体の整備を進めます。これらの研究基盤の整備は、世界のブラキポディウム研究者から、また、草本バイオマスや穀物研究者からの要望に応えるものでもあります。また、トランスクリプトームやメタボロームなど、理研の網羅的解析基盤技術を活かして、草本バイオマス植物のバイオマス生産に関わる細胞システムの解明に取り組みます。
培養困難な微生物の中には、バイオマス資源活用に有用な遺伝子をもつものが存在すると期待されています。私たちは、培養困難な微生物について、メタゲノム・シングルセルゲノム解析技術を開発して適用し、リソースとして整備していきます。また、培養可能な微生物リソースからは、新規PHA合成、分解・発酵などの利活用に重要なものを探索してゲノム解析を進めるとともに、データベース構築などの高付加価値化を行い、バイオマス資源利用を加速するための探索研究を進めます。
・ソフトバイオマス研究のモデル植物ブラキポディウムの完全長cDNAライブラリを作成した。
・ブラキポディウムの完全長cDNA都合3万クローンについて配列解読を行った。